結婚にぴったりのワイン

 先日、いわゆるバチェラー・パーティ(最後の独身の夜を友人たちと過ごす会)で、bar bossaを利用していただきました。
  
 その際に、「あのー、彼が今度結婚するんですよ。で、結婚にぴったりのワインを僕たちに選んでいただけませんか?」という注文があったわけです。
 
 ええと、あれですよね。最近、よく漫画とかドラマとかである、「そんな今のあなたにぴったりのワインをご用意しました」っていうあれです。そういうのってすごく張りきってしまいます。お客様は「今日は僕らはとても楽しみたいんです。それで、このお店ならそんな要求に完璧に答えてくれそうなので、今日ここに来たわけなんです」と思ってくれているんです。それは完璧な答えを返さなきゃプロのサービスではないですよね。

 で、もしあなたがそんな時、ワインのサービスをするとなったらどうしますか?

 普通なら「お祝い事にはシャンパーニュ」ですよね。あるいは「カロン・セギュール(ボルドーのハートマークのワイン)」か「レザムルーズ(ブルゴーニュの恋人たちというワイン)」を出すのも無難な選択かと思います。しかし、シャンパーニュって感じじゃなさそうだし、うちにはカロン・セギュールとかレザムルーズのような高いワインは置いてません。で、こうしました。

 「このブラン・ド・ノワールなんてどうでしょうか? このワインは本来、赤ワインになるはずのピノ・ノワールという品種を使って白ワインを作っているんです。実は結婚って、元々は他人同士がいっしょに生活をするので、色んなぶつかることが起こるものなんです。そんな時にはやはり『赤ワイン用のブドウで白ワインを作る』というような、二人で『あえてそんな困難な結婚生活を楽しむような工夫』が必要なんです。そう思いませんか?」

 で、一本目はクリヤーしました。

 「さっきのお話とワインはすごく面白かったので、また何かすすめてもらえますか?」と来たんです。

 で、こんなワインをオススメしました。

 「ワインってボトルの中で熟成するのはご存知かと思います。はじめのうちはとっつきが悪く、おいしくないなあなんて感じていたワインも、10年くらいたてばギスギスしていた角もとれて、まろやかになり、若い頃には隠されていた香水のような香りも目の前に現れてきたりします。結婚も同じで、二人の間に色んなことはあるものの、時間がたてば色んな二人だけの楽しみが現れてきます。このボルドーのワインは2002年なので、いわゆるオフ・ヴィンテージなのですが、ちょうど今飲み頃になっています。時間を重ねるというのも『結婚の楽しみ』のひとつですよ」

 では、すべての結婚に乾杯!